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更新日:2026.08.27

人とロボットが共存する現場へ

―ロボットを入れる前に、私たちが考えるべきこと―

今月は、加工現場の自動化やロボット導入について考えさせられる機会が続きました。

先日参加した「SIer’s Day in 北信越」では、ロボットを実際の生産現場へ導入した企業や、導入支援に携わる公的機関から、さまざまな事例が紹介されました。
そこで改めて感じたのは、ロボット活用は、もはや一部の大企業だけの話ではないということです。
人手不足が深刻になる中、中小企業にとっても、ロボットや自動化設備をどのように活用するかは、遠い将来の話ではなく、これからの企業存続に関わる現実的なテーマになりつつあります。
 
ちょうど同じ頃、テレビで中国の「人型ロボット運動会」の様子を目にしました。
走る、跳ぶ、転倒しても立ち上がる。少し前までは、ぎこちなく歩くだけでも話題になっていた人型ロボットが、今ではスポーツ競技に挑戦しています。
その進化の速さには、正直、驚かされました。

しかし、長年、製造現場の改善に関わってきた私が関心を持つのは、ロボットが人間より速く走れるかどうかだけではありません。

製造現場で本当に求められているのは、
 ・重いものを何度も運ぶ
 ・単調な作業を繰り返す
 ・危険な場所や厳しい環境で作業する
 ・夜間や休日にも安定して生産する
といった、人にとって負担の大きい仕事を引き受けてくれるロボットです。
こうした仕事をロボットに任せることができれば、人は「判断する」「工夫する」「改善する」「人を育てる」といった、人にしかできない仕事へ、より多くの時間を使えるようになります。

 
ただし、ここで注意しなければならないことがあります。
それは、ロボットを導入すれば、直ちに生産性が上がるわけではないということです。

私はこれまで、多くの中小製造業の現場に入ってきました。その中で感じるのは、作業方法やモノの流れが十分に整理されないまま、「人が足りないから自動化したい」「補助金が使えるからロボットを入れたい」という話が先行してしまうケースが少なくないということです。

しかし、ムダの多い工程をそのまま自動化すれば、ムダまで自動化することになります。
 ・部品を遠くまで運んでいる。
 ・仕掛品が工程の間に滞留している。
 ・作業者によって方法が違う。
 ・設備の前で人が待っている。
 ・何を、いつまでに、いくつ作るのかが明確になっていない。
こうした状態を残したまま高価なロボットを導入しても、期待した効果が出ないばかりか、かえって工程が複雑になってしまう可能性があります。

だからこそ、ロボット導入の前に、
「この仕事は、本当に必要なのか」
「この運搬や動作は、なくせないのか」
「工程全体の流れを、もっと単純にできないか」
「人が担うべき仕事と、機械に任せる仕事を、どう分けるのか」
を考えなければなりません。

ロボット導入の出発点は、ロボットを選ぶことではありません。

まず現場をよく見て、仕事の流れを整え、人とモノの動きを明らかにすることです。
そのうえで、「ここをロボットに任せれば、人の負担が減り、工程全体がもっと良くなる」という場所を見極める必要があります。

ロボットは、現場の問題を自動的に解決してくれる魔法の道具ではありません。
一方で、現場を見直し、仕事の流れを整えたうえで活用すれば、人手不足を補うだけでなく、働き方そのものを変える大きな力になります。

これから問われるのは、「人か、ロボットか」という二者択一ではありません。
人は、考える。
人は、判断する。
人は、改善する。
そしてロボットは、正確に、繰り返し、黙々と働く。

それぞれの得意なことを組み合わせ、現場全体として最も良い流れをつくる。
それこそが、これからの生産現場に必要な「人とロボットの共存」ではないでしょうか。

技術の進歩をただ眺めるのではなく、自社の現場で、どの仕事を人が担い、どの仕事をロボットに任せるのか。
私自身も、これからさらに現場へ入り、企業の皆さんと一緒に汗をかきながら、その答えを探していきたいと思います。